ジムの会員が集まらないのは値段のせいではない|1店あたりの会員数は5年で26%減っている
「近くに新しいジムができてから、会員が集まりにくくなった」「会費を下げないと選ばれないのでは」——ジムのオーナーからよく聞く話です。ところが公的な統計を見ると、値下げ競争が起きているという説明は、数字とは合いません。何が起きているのかを、統計と各社の開示から整理します。
この記事のポイント
- 経済産業省の統計調査によると、2019年から2024年で事業所数は16.4%増えた一方、会員数は14.3%減少。その結果、1事業所あたりの会員数は2,302人から1,695人へ26.3%減っている。
- 同じ期間、会員1人あたりの年間売上は99,549円から100,973円へほぼ変わっていない。つまり値下げ競争が起きているのではなく、同じ人数をより多くの店で分け合う形になっている。
- 会員数には明確な季節性がある。月末会員数の前月差を取ると、12月・11月・3月は掲載4年すべてで純減、5月〜9月は純増。年末の2か月で抜けた分を、1月の入会では取り返せていない。
減ったのは単価ではなく、1店あたりの頭数
経済産業省の統計調査(フィットネスクラブ)で、2019年と2024年を比べてみます。

注目してほしいのは右端です。会員1人あたりの年間売上は、99,549円から100,973円へ。5年でほとんど変わっていません。 つまり業界全体として値下げが進んだわけではないのです。減ったのは1事業所あたりの会員数のほうで、2,302人から1,695人へ26.3%減。店が16.4%増え、会員が14.3%減った結果です。
「値段のせいで選ばれない」のではなく、「同じ人数を、より多くの店で分け合っている」——これが数字から見える実態です。だとすると、打ち手は値下げではなく、限られた検討者に見つけてもらう確率を上げることになります。
会員数には、はっきりした季節性がある
同じ統計の月末会員数から前月差を計算すると、もう一つの構造が見えます。12月・11月・3月は、掲載されている4年すべてで純減。逆に5月から9月は、ほぼ一貫して純増です。
- 12月(4年平均で約3.1万人の純減)——年末は最も抜ける月
- 11月(同 約1.7万人の純減)——実は12月より前から始まっている
- 3月(同 約2.8万人の純減)——年度末・転勤退会
- 9月(同 約3.7万人の純増)——最も入る月
- 7月(同 約2.1万人の純増)/5月(同 約1.1万人の純増)
年末の11月・12月で抜けた分を、1月の入会では取り返せていません。 「1月は入会が多い」という体感は間違っていませんが、その前の2か月で失っている分のほうが大きい、というのが数字の姿です。年末の退会を減らす施策のほうが、1月の入会キャンペーンより効く可能性がある——この視点は、月次の増減を自分で取らないと出てきません。
「24時間ジムが伸びている」も、もう一括りにできない
小型・24時間業態が伸びているとよく言われますが、直近の各社の開示を見ると、同じカテゴリの中で明暗が分かれています。
- chocoZAP(RIZAPグループ)… 2025年3月末から2026年3月末で店舗は152店増えた一方、総会員数は135.0万人から116.1万人へ減少。同社が公表している退会率の指数も1.01から1.64へ上昇しています
- エニタイムフィットネス(Fast Fitness Japan)… 2025年12月末で国内会員108.9万人(前年同月比+15.2万人)、店舗1,235店(+62店)。1店舗あたり平均会員数は882名で、前年より84名増えています
店舗を増やしながら1店あたりの会員を増やせているところと、増やせていないところがある。「業態」ではなく「1店舗が抱える会員の厚み」で見ないと、実態が見えない段階に入っています。
自店で確認する手順
分散が進んでいる以上、勝負は「近くで探している人に見つかるか」です。費用をかけずにできる確認を並べます。
- 1「駅名+ジム」「市区町村名+パーソナルジム」で、地図・検索・AIの3つに聞いてみる——自店が出るか、何番目かを見る。ジム選びは通える距離で決まるので、この検索が入口になります
- 2提供している内容を、探す人の言葉で書き出す——「24時間」「女性専用」「パーソナル」「マシン特化」「シャワーあり」「駐車場あり」。設備の有無は選ぶ理由に直結します
- 3料金体系を明記する——ジム探しは料金の比較から入ります。載っていない店は比較の候補から外れます
- 4写真を最新にする——マシンの入れ替えや内装の更新をしているのに、写真が数年前のままになっていないか
- 5年末(11〜12月)の退会が多い月に、何を仕掛けているかを見直す——1月の入会施策より先に、抜ける穴を塞ぐほうが効く可能性があります
難しくはない。ただ、スタッフが少ない店ほど後回しになる
ここまで書いたことは、どれも自店でできます。 ただ、正直なところ面倒です。 料金プランを1つ変えるだけでも、自社サイト・地図・掲載ポータル・SNSと直す場所が複数に及びます。写真も、設備を更新するたびに全部を差し替える必要があります。
そして小規模なジムほど、スタッフの人数が限られています。できるかどうかではなく、続けられるかどうかの問題になる——1店あたりの会員が薄くなっている環境では、この積み重ねの差がそのまま会員数の差になります。
ミチビトがお引き受けしているのは、この部分です。主要サービスへの店舗情報の一括反映、Googleビジネスプロフィールの整備、クチコミ返信の下書き、そして地図やAI検索での見え方の定点確認まで。まずは自店がいまどう見えているかを、お問い合わせから無料でご相談ください。整備の中身は機能一覧にまとめています。
まとめ:今日、10分でやること
会員1人あたりの売上はほぼ変わっていません。減ったのは1店あたりの頭数で、5年で26%。値下げではなく、限られた検討者に見つけてもらう確率を上げるほうが、この構造には合っています。
- 1「駅名+ジム」で、地図・検索・AIの3つに聞いてみる(5分で現状が分かります)
- 2設備・料金・営業時間が、掲載中のすべての場所で最新かつ一致しているかを確認する
- 311月・12月の退会に対して何を仕掛けているかを見直す——現状の見え方の確認は、ミチビトの無料診断でも店名と住所をLINEで送るだけで代行しています(無理な売り込みはしません)
出典
- 特定サービス産業動態統計調査(フィットネスクラブ・長期データ)(経済産業省)
- 財務ファクトシート(chocoZAP 会員数・店舗数・退会率)(RIZAPグループ株式会社)
- 2026年3月期 第3四半期決算短信(株式会社Fast Fitness Japan)
よくある質問
Q.会費を下げないと、会員は集まらないのでしょうか?
A.統計を見る限り、値下げ競争が起きているという説明は数字と合いません。会員1人あたりの年間売上は2019年の99,549円から2024年の100,973円へほぼ変わっていない一方、1事業所あたりの会員数は26.3%減っています。つまり単価ではなく、店舗数の増加によって会員が分散したことが主因と読めます。
Q.1月の入会キャンペーンは効果がありますか?
A.1月に入会が増えるのは事実ですが、統計の月末会員数から前月差を計算すると、11月と12月の純減の合計のほうが1月の純増より大きくなっています。年末に抜ける会員を減らす施策のほうが、金額的な効果は大きい可能性があります。まずは自店の月別の入退会を数えてみることをおすすめします。
Q.24時間ジムは伸びているのではないですか?
A.業態でひとくくりにはできない段階です。各社の開示では、店舗を増やしながら会員を減らしているところと、店舗を増やしつつ1店あたりの会員数も増やしているところの両方があります。カテゴリ全体ではなく、1店舗が抱える会員の厚みで見る必要があります。
Q.フィットネス業界の統計は、今後も確認できますか?
A.会員数については難しくなります。経済産業省の特定サービス産業動態統計調査は2024年12月調査で終了し、後継の統計は調査事項が売上と従業者数の2項目のみで、会員数・利用者数の項目がありません。今後、業界の会員動向を追うには各社のIR開示を個別に見るしかなくなります。