葬儀社の売上が伸びない構造|死亡数は10年で24%増えたのに、1施設あたりの施行件数は減っている
「高齢化が進むから、葬儀の需要はこれから増える」——長くそう言われてきましたし、実際その通りでした。死亡数は10年で24%増えています。ところが、葬儀業全体の売上高はほとんど伸びていません。数字を並べると、その理由がはっきり見えてきます。この記事では公的統計をもとに、いま葬儀社に何が起きているのかを整理します。
この記事のポイント
- 全国の死亡数は2015年の129.1万人から2024年は160.5万人へ、10年で24.4%増えた。ところが同じ期間の葬儀業の売上高は6,065億円から6,109億円で、ほぼ横ばい(+0.7%)にとどまっている。
- 理由は施設側にある。同じ期間に葬儀業の事業所数は2,205から3,006へ36.3%増加。需要の伸びを上回るペースで施設が増えたため、公表値から算出すると1事業所あたりの施行件数は12.1%減っている。
- 「市場が伸びるから自社も伸びる」という前提が成り立たない状態。地域の中で選ばれるかどうかが、そのまま業績の差になる局面に入っている。
需要そのものは、確かに増えた
厚生労働省の人口動態統計によると、全国の死亡数は2015年の1,290,510人から、2024年は1,605,378人へ増えました。10年で24.4%増です。2024年は過去最多で、4年連続の増加でした。この点だけを見れば、市場は確実に拡大しています。
それなのに、売上高はほぼ横ばい
一方、経済産業省の特定サービス産業動態統計調査で葬儀業の数字を見ると、売上高は2015年の6,065億円に対し、2024年は6,109億円。10年で+0.7%、事実上の横ばいです。需要が24%増えたのに、売上が動いていない。この差はどこから来ているのでしょうか。

答えは施設側にあります。同じ期間に、葬儀業の事業所数は2,205から3,006へ、36.3%増えました。 需要の伸び(24.4%)を上回るペースです。両方の公表値から計算すると、1事業所あたりの施行件数は12.1%減少しています。増えた需要を、それ以上に増えた施設で分け合う構図です。
つまり、「市場が伸びるから自社も伸びる」という前提が成り立たない状態です。業界全体の数字が良くても、1施設の実感が伴わない——多くの葬儀社の肌感覚と、統計は一致しています。
単価にも同じことが起きている
もう一つ、単価の話もしておきます。同じ統計の売上高と取扱件数から計算すると、1件あたりの平均は2015年の約144万円から、2024年は約121万円へ。16%ほど下がっています(※これは公表されている売上高と件数からこちらで算出した値で、統計そのものが単価を公表しているわけではありません)。
ただし、ここには続きがあります。この計算値は2021年の約113万円で底を打ち、直近3年は回復基調にあります。値上げが少しずつ通り始めている、と読めます。「下がり続けている」わけではありません。
だから、勝負は「地域の中で選ばれるか」になる
施設が増え、1件あたりの単価が長期では下がっている。この状況で効くのは、同じ地域の中で最初に見つけてもらえるかどうかです。葬儀は、他の業種と比べて検討の時間が極端に短い商売でもあります。多くの場合、急に必要になり、その日のうちに決める。じっくり比較する余裕はありません。
そして、探し方も変わりました。慌てている人がまず開くのはスマホです。「◯◯市 葬儀社」で地図を開き、上位に出てきた数社を見て、電話をする。あるいは最近では、AIに「近くの葬儀社を教えて」と聞く人もいます。その画面に出ていなければ、そもそも候補にすら入りません。
自社で確認する手順
費用をかけずに、今日できることを並べます。
- 1「市区町村名+葬儀社」で、地図・検索・AIの3つに同じ言葉で聞いてみる——自社が出てくるか、何番目に出るかを見る。出てこない面があれば、そこが伸びしろ
- 2対応できる葬儀の形を、具体的に書き出す——「一日葬」「直葬・火葬式」「家族葬」など、いま増えている形の名前が情報に載っているか。載っていなければ、その言葉で探している人には見つけてもらえない
- 324時間の受付体制を、情報として明記する——急な依頼が多い業種なので、これは決定要因になります
- 4式場ごとに情報が分かれている場合、すべての式場の情報が正確かを確認する——本社だけ整えて、各会館の情報が古いまま、という状態が起きやすい
- 5クチコミへの返信状況を確認する——葬儀のクチコミは書かれる件数が少ないぶん、1件の重みが他業種より大きくなります
難しくはない。ただ、会館の数だけ手間が増える
ここまで書いたことは、どれも自社でできます。 特別な技術は要りません。ただ、正直なところ面倒です。 特に葬儀社の場合、会館ごとに情報を持っているケースが多く、掲載先の数×会館の数だけ管理画面があります。1つの会館の営業時間を変えるだけでも、直す場所は複数に及びます。
そして、葬儀社の現場は突発的な依頼で動きます。落ち着いて情報の点検をする時間は取りにくい。できるかどうかではなく、続けられるかどうかの問題になります。
ミチビトがお引き受けしているのは、この部分です。主要サービスへの店舗情報の一括反映、Googleビジネスプロフィールの整備と改ざんの監視、クチコミ返信の下書き、そして地図やAI検索での見え方の定点確認まで。まずは自社がいまどう見えているかを、お問い合わせから無料でご相談ください。整備の中身は機能一覧にまとめています。
まとめ:今日、10分でやること
死亡数は10年で24.4%増えたのに、葬儀業の売上高はほぼ横ばい。事業所数が36.3%増えたためです。市場全体の追い風は、もう自社の追い風ではありません。地域の中で選ばれるかどうかが、そのまま差になります。
- 1「市区町村名+葬儀社」で、地図・検索・AIの3つに同じ言葉で聞いてみる(5分で現状が分かります)
- 2対応できる葬儀の形(一日葬・直葬・家族葬など)が、情報として明記されているか確認する
- 3会館が複数ある場合、すべての会館の情報が最新かを点検する——この点検と修正は、ミチビトの無料診断でも社名と住所をLINEで送るだけで代行しています(無理な売り込みはしません)
出典
- 令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況(厚生労働省)
- 令和7年(2025)人口動態統計月報年計(概数)の概況(厚生労働省)
- 特定サービス産業動態統計調査(葬儀業・長期データ)(経済産業省)
よくある質問
Q.死亡数が増えているのに、なぜ葬儀業の売上が伸びていないのですか?
A.施設数が需要の伸びを上回るペースで増えているためです。2015年から2024年の10年間で、死亡数は24.4%増えた一方、葬儀業の事業所数は36.3%増加しました。その結果、公表値から算出すると1事業所あたりの施行件数は12.1%減少しています。加えて、1件あたりの平均額も長期では下がっています。
Q.葬儀の単価は下がり続けているのですか?
A.長期では下がっていますが、直近は回復基調です。統計の売上高と取扱件数から算出すると、1件あたりの平均は2015年の約144万円から2024年は約121万円へ下がっていますが、2021年の約113万円で底を打ち、そこから3年は上向いています。なお、この単価は公表値からの算出であり、統計が単価そのものを公表しているわけではありません。
Q.家族葬への移行はまだ進んでいますか?
A.民間の全国調査によると、家族葬の実施割合は2022年の55.7%をピークに、2024年50.0%、2026年47.0%と2回連続で低下しています。代わりに増えているのが一日葬(6.9%→11.9%)と直葬・火葬式(4.9%→10.8%)です。移行の中心は、家族葬からさらに簡素な形へ移っています。
Q.この統計は今後も確認できますか?
A.難しくなります。経済産業省の特定サービス産業動態統計調査は2024年12月調査をもって終了し、後継の調査では葬儀業が独立した分類として公表されず、取扱件数の調査項目もありません。葬儀業の施行件数を追える公的な月次統計は、2024年12月分が最後になります。